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[コメント] 国境の町(1933/露)

1914年。ドイツとの国境に近い町(現ウクライナ?)。馬車が来る。それを公園のベンチに座って見る女性、これがヒロインのアンカ。彼女は靴工場の娘。エレーナ・クジミナがやっている。
ゑぎ

 居眠りをする御者。馬車馬がブルル、と息を吹きながら、何か喋るので吃驚する。冒頭から、はっきりしたコメディであることを宣言するのだ。続いて靴工場。婦人の足を測る職人。その横で沢山の職人が靴を作る。中に兄のニコライと弟のゼンカ。このニコライが一方の主人公。オフでサイレンの音。あっちこっち何ヶ所も。ニコライが、ストだ、助けに行こうと云い、立って行く。皆が続く。

 工場から沢山の工員が出てくる。合流する靴職人たち。それをしり目に、ゼンカは、ベンチに座っている犬を連れた女性にちょっかいを出し、犬を放り投げたりする。この映画、椅子やベンチを使った演出が頻出する。また、この時点では、アンカとニコライの恋愛譚になるのかと予想してしまうが、アンカがこの兄弟と交わることは、ほゞない映画になっていく。

 アンカの家には、ドイツ人のオジさんが居候。他に労働運動のリーダーもいる(潜伏している感じ)。お父さんとドイツ人はチェッカーをする仲。そこにドイツとの戦争が勃発する。このドイツ人が町を去って行くシーンは肌理細かに見せる。靴職人の兄は兵隊に。弟も志願する。こゝから本作は塹壕の戦争映画になる。これも私は予想していなかった展開で吃驚させられた。突撃と爆弾の炸裂。ドイツの機関銃掃射。全体を引いて見せるようなショットが無く、銃弾の音響が弱いのは、今見ると気になる。ニコライの活躍。彼はドイツ兵を捕虜にする。

 アンカたちの町。ドイツ兵捕虜たちが連れて来られる。食糧難のおり(?)、捕虜も日中は町で働くべし、というお触れ。これって本当にあったんでしょうね。この展開にも驚く。長いベンチに捕虜のドイツ人とアンカ。立つとドスン、というコメディ演出。アンカは一目惚れか。彼女は、捕虜を家へこっそり連れ帰る。お父さんに見つかり、大騒動に。しかし捕虜は元靴職人だったこともあり、靴屋で働き出す。だが、ドイツを憎む人たちから袋叩きにあう。これには、そうなるだろうと思ってしまう。

 そして二月革命の勃発。町では、労働運動のリーダーが人々を率いて、表立った活動をするようになる。戦場でもニコライがリーダーとなって呆気にとられるような行動に出る。ということで、革命礼讃のプロパガンダが描かれているのだが、何よりも、アンカとドイツ兵捕虜のやりとりを中心にした、可愛らしいコメディ演出部分が心に残るし、結果的に、帝政よりも、革命よりも、友愛を描いているように感じられる。

(評価:★3)

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