[コメント] ブレードランナー(1982/米)
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唯一観ていなかったファイナルカット版をBSで観たのを機会に、この史上最大のカルト・ムービーのコメントを初めて書くよ。ドキドキ。 今となっては慣れてしまったが、初めて観た時はすごーく感動したんだよね。それがどのバージョンだったか、もはや覚えちゃいないけど。
こんなことを書くとお叱りを受けるかもしれないが、『エイリアン』と『ブレードランナー』という映画史に残る2大傑作SF映画を作ったことで、リドリー・スコットは過大評価されてしまった気がする。 トム・クルーズの『レジェンド』とか、あのロン毛が伝説だって話ですよ(<だったら『レジェンド』で書け)。
これは後(つまり今)になって分かることだが、リドリー・スコットは決して巧くない。 言い方を変えれば、「流麗に語る」ということが得意ではない。弟は過剰なほど流麗なのにな。 しかし、流麗に語らない“味”がある。いや、「あった」という方が正しいか。 まあ、とにかく、流麗に語らない味が、この映画の世界観とテーマと時代に上手くはまった気がする。 この映画の深遠なテーマを、より深遠たらしめているのは、「流麗じゃない語り口」に違いない。 要するに、観客に思案させる映画なのだ。
興味深いのは、リドリー・スコットが残した2大傑作SF映画、『エイリアン』と『ブレードランナー』には、不思議な共通点があることだ。 『エイリアン』はSFでありながらまるで「ゴシックホラー」のようであり、『ブレードランナー』はSFでありながらまるで「ハードボイルド」のようである。 あらためて観たら、デッカードにはフィリップ・マーロウのイメージを重ねてるように見えたんだよね。と思って調べたらWikipediaに似たようなことが書いてあったよ。Wikipedia情報を鵜呑みにしちゃいけないけど。
で、これら古くからあるジャンルとの融合によって、単なる科学趣味や宇宙趣味に陥りがちなSF映画を、きちんとした「人間的な物語」として構築できたんじゃないだろうか。 いやまあ、ただの結果オーライかもしれないけど。
レプリカントという「人間に非ざる者」を通じて「人間とは何か」を問う。
これは、設定そのものが、ストーリーはおろかテーマの根幹に関わる大変優れたSFの代表だ。 そして、「人間とは何か」というテーマは、人類普遍の永遠の課題だ。 それを「観客に思案させる」語り口で魅せる。
独特の世界観に目が行きがちだが、それだけではない「史上最大のカルト・ムービー」になるだけの要素があったんだよ。 公開当初は不入りだったけど。
(11.11.15 BSにて鑑賞)
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