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[コメント] サマリア(2004/韓国)

「バスミルダ」と「ソナタ」の間で翻弄される「サマリアの女」。[夕張市民会館 (ゆうばりファンタ2005)]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヨーロッパ旅行のために援助交際を繰り返す女子高生・チェヨン。インドの伝説の娼婦「バスミルダ」を気取る彼女は自分の行為が悪いこととは思っていない。むしろ、男を慰めてやっているのだという誇りすら持っているようにも見える。

そんなチェヨンを理解できなかった親友・ヨジン。しかし、チェヨンの突然の死によって、ヨジンは自らをチェヨンと同じような立場に置くことになる。とは言っても、ヨジンもチェヨンと同じ「バスミルダ」になったわけではない。ヨジンが男たちと寝るのは、チェヨンと違って男たちに金を返すためだからだ。

聖書に記述がある、イエスと出会ったことで生き方を変えた、名もなきサマリアの女。チェヨンが相手をした男たちと次々に会い、それまでの考え方が徐々に変わっていくヨジンは、まさにこのサマリアの女にそのまま重なる。

そして、韓国の大衆車の名前だという「ソナタ」は、彼女らが暮らすこの社会と言い換えることもできる。ヨジンが寝た相手を殺めた父親は、最後の旅行でヨジンに車の運転を教えて、そのまま去っていく。車がこの社会を表しているとすると、車を運転するということは、すなわち社会を渡って生きていくという意味に他ならない(事実、監督もそう明言していた)。

ヨジンはチェヨンに対して、同性愛とまではいかないまでも、ある種特別な愛情を抱いていたに違いない。そしてまた、ヨジンの父親も、ヨジンに並々ならぬ愛情を注いでいたはずだ。自分が愛していた親友に去られ、かつ自分を愛してくれた父親も去っていった「サマリアの女」ヨジン。それでも、彼女には親友のおかげで拓けた視野と、父親が教えてくれた「車の運転のしかた」がある。どうか彼女の「運転」が上達し、その前途に幸あらんことを。

(評価:★4)

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