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[コメント] ライフ・アクアティック(2004/米)

「普通の映画」であることのスバらしさ

「100億円で作ったハリウッド映画か、10万円から500万円で作ったインディー・ムービーかのどちらかしかなくなる。日本には1億円から5億円規模の国内向け作品が多くありますが、それが淘汰されます。なぜかというと、今だったら5億円の映画で2000万円ギャラをもらったとしましょう。それよりは100万円で自分たちだけで好き放題作って、世界に1億円で売ったほうが儲かる、ということなんですよ」(EYESCREAM2009年1月号)

いきなり長々と引用してしまったが、これは、ハイパー・メディア・クリエイター兼エリカ様の旦那=高城剛の発言である。映画の「産業」としての投資価値に‘あえて’焦点を絞った発言なので、その是非については詳しく議論できないが、個人的には言いたいことはすごく良くわかる。要するに、これからの映画は「大作」か「小品」か、そのどちらかしか生き残っていくことは難しい、ということだ。

で、『ライフ・アクアティック』である。本作の投資額については私の知るところではない(せいぜい5億円くらいか?)が、監督のウェス・アンダーソンが目指しているのは、深読みさせてもらえば、高城が言うところの「大作」(ex.最新CG技術)でも「小品」(ex.ミニシアター系)でもない、「普通の映画」なんじゃなかろうか?テレビや漫画に媚びを売るわけでもなく、こじんまりと小っちゃく纏まるのでもなく、映画が「普通に映画であること」のスバらしさを、彼は『天才マックスの世界』以降ずっとバカ正直に追い求め続けているように思う。

海洋冒険活劇、父と息子の関係、家族の再生、孤島への上陸&救出作戦、潜水艦(もしかしてビートルズの『イエロー・サブマリン』へのオマージュ?)、ジャガーザメ(もしかして『ジョーズ』へのオマージュ?)などなど、とことん古典映画的=老朽化した題材を、愚直なまでに古典映画的=ハンドメイド感たっぷりの撮影手法で描き切っている(特に、あの船室の断面セットの楽しさといったら!!!)。まあ、そういう意味では、無茶苦茶ノスタルジーに溢れた古くさい映画なのだが、流行に流されない、映画に向き合うその真摯な姿勢に、私は感動を禁じ得ない。

本作の終盤、ビル・マーレイ演じる「無邪気な海洋冒険家」のズィスー船長は、高らかに宣言する。

「すべては冒険だ!」

海に生涯を捧げてきた(=Life Aquatic)バカな男が、思わず笑ってしまうほどの本音を臆面もなく訴えるその姿はそのまま、「無邪気な映画少年」であり続けるウェス・アンダーソンの姿なのだと、私は思った。

(評価:★4)

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