[コメント] よさこい旅行(1969/日)
本作の主な舞台は高知県。フランキー堺は土佐大原駅という架空の駅の駅員で専務車掌ではない。駅員は2人だけ。部下は鈴木ヤスシ。まず、東映の列車シリーズでもあった弁当の話をし、得意のパターンと思う。フランキーは自分で作っている、妻は作ってくれない、と云うことで夫婦の関係を垣間見せる。また、今度、新しい駅長が来る、厳しい人だと云う。
次にバスガイドの倍賞千恵子。「南国土佐を後にして」を唄う。上手い。若い男性客にモテる。本作はフランキーと倍賞が最初から夫婦のパターンで、前3作とはガラリと様相が異なる。これまでの3作は、全て倍賞がフランキーを追いかけて猛アタックする役柄だったのだから。夫婦の朝食・出勤風景では、出掛けにキスをするが、キスの後、納豆の糸をはらう所作をたくみに演出し、キスはお義理のもので、もう倦怠期だと端的に分からせる。それを見る大家のミヤコ蝶々。
倍賞は隣家のお寺の和尚−藤岡琢也とその息子−森田健作(本作では国鉄職員ではなく大学生)たちと夜中まで麻雀をしたり、森田とその友人の水野皓作らと一泊旅行にも出る(奥道後温泉に行く)といった行状が描かれ、一方、フランキーは行きつけの飲み屋の長山藍子に恋をする。というワケで、フランキーの長山への恋の行方と夫婦の関係はどうなるか、というのがプロットのテーマになる。
さて、コメディ演出として特筆すべき場面をいくつかあげたいと思う。まず、倍賞が森田とその彼女(倍賞のバスガイドの後輩でもある)中川加奈と3人で恐怖映画を見る場面。フランキーが映画中のフランケンシュタイン(の怪物)と狼男みたいなキャラも演じているのだが、こゝの所作表情は面白い。映画を見終わった3人が、映画館の前で、淀川長治の口真似をする。
次に、藤岡のお寺(宿坊でもある)にストリッパーたちが泊っていて、フランキーがその練習風景をこっそり覗く場面。団長で振付師でもある立原博が、床下のフランキーを追い詰めるのだが、その際に畳や床板を這う所作はとてもよくやっている。立原博も瀬川作品の常連だが、本作のピンポイント出演は最も目立った例だろう。
そして一番笑った場面が、本作でも伴淳三郎とフランキーの絡みだ。本作の伴淳は上に書いた新任の厳しい駅長とその母親の二役。倍賞に愛想を尽かしたフランキーはとうとう駅舎に泊まるようになるのだが、夜中に長山が駅舎の宿泊部屋に忽然と姿を現すところから始まるシーケンス。なんやかんやあって、そこへお婆さんの伴淳が来たあと、フランキーが伴淳を長山と思い込んで絡む演技演出がバカバカしいのだが、大いに笑えた。尚、ラストはタイトルの通り「よさこい祭り」の場面で主要人物が皆踊りに興じて終わる。こゝで「耳打ち」の演出があるのもいい。本シリーズ、瀬川作品の良さは、いろいろあっても必ずホロリとさせて終わるところだ。
#備忘でその他の配役などを記述します。
・和尚の藤岡の妻(森田の母)は楠トシエ。
・長山の居酒屋の板前で柳沢真一。
・奥道後のホテルでピンキーとキラーズの歌唱場面がある。今陽子と倍賞のアップの切り返し。
・土佐大原駅のロケ地は予讃線の下灘駅らしい。高知県ではなく愛媛県伊予市。
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