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[コメント] やさしくキスをして(2004/英=ベルギー=独=伊=スペイン)

ケン・ローチの作品では、必ずどこかで犠牲を払っている人たちがいる。ラブストーリーという触れ込みの本作もその例に漏れなかった。(Reviewに『ブレッド&ローズ』『SWEET SIXTEEN』のネタバレあり)[千代田区公会堂 (試写会)]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







全作品観ているわけではないので偉そうなことは言えないが、ケン・ローチの作る物語は、頑張った人間が100%報われることがないような気がする。

例えば『ブレッド&ローズ』では、主人公は雇用者に搾取されている移民たちに労働運動を始めさせるきっかけを作るも、不法移民の彼女自身は結局強制送還となる。『SWEET SIXTEEN』では、主人公の少年が家族の幸せを願ってしたことが、結局は犯罪となる。

それでも、これらの作品では、最終的にそういう不都合をかぶるのは主人公自身たちであった。言うならば、自分たちがしたことの結果がこれであり、それが悪い方向へ転んでしまったのも仕方がないという面も、確かに少しはあった。

しかし、この作品は違う。主人公2人がしたことで不都合を被っているのは、主人公ではなくその家族である。それなりに幸せだった一家は崩壊し、両親はコミュニティで村八分にされ、姉は結婚ができなくなる。

もちろん、主人公にも払った代償はある。カシムはまさにその家族を失うことになり、ロシーンは今までの職を離れざるを得なくなった。しかし、2人が一緒になれば新しい家族ができるわけだし、代わりの職だってちゃんと用意されている。2人にとっては、実質的には失うものはないのだ。

それに比べると、主人公の周りの人々の犠牲の何と大きなことか。かと言って2人の下した選択が間違っているわけでもない。誰も悪くないだけに、どうにもやり切れないのである。

(評価:★3)

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