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[コメント] 危険な英雄(1957/日)

小学生の誘拐事件を題材にして、新聞記者の報道倫理をテーマに描く社会派の作品だが、主人公の記者を石原慎太郎がやっているという、ある意味お宝映画だ。
ゑぎ

 しかも、石原の役柄は、警察の捜査への影響や被害者家族の心情などを全く無視し、報道の自由、というよりも、特ダネをすっぱ抜くこと、つまり、利己を最優先にする記者、というのだから面白い。『からっ風野郎』(1960)の三島由紀夫もそうだったが、有名作家の余興といったレベルではなく、全く真剣に演じている。また、演出が鈴木英夫なので、全体に話の運びも上等なものだ。今見ると、トンデモ映画の雰囲気も多いのだが、そういう意味でも、もっと有名な映画になってしかるべきだと思うのだが。

 誘拐された少年の姉が司葉子、父親は三津田健、母親に岸輝子。司が警察署の前で登場するシーンで、車から降りた際に、アクション繋ぎでカットを切り換えるのだが、こゝであえてカットを換える、というのが、ヒロインとしての特別感を出す、考えられた演出なのだ。

 さて、警察の対応についても、報道陣の描写についても、隔世の感がある。まず、『天国と地獄』(1963)で描かれたような、被害者の家に警察が常駐し、犯人からの脅迫電話を録音したり、犯人の居場所を逆探知したり、といった対応が全くない。警察への通報後も、犯人から被害者宅に普通に電話がかかって来て、被害者家族だけで、対応しているのだ。あと、警察がマスコミに対して報道規制(協定)を敷く、といったことは行われない時代だ(日本で適用されたのは1963年以降とのこと)。さらに驚かされるのは、新聞記者たちが、被害者宅に、勝手に入って行く描写だ。それも当然の権利だ、という態度なのだ。基本、居間に近い廊下のような場所に集まっているのだが、石原はひとり司葉子の部屋へ勝手に入って行く。しかし、この部屋での、石原と司の会話シーンのカット割りはいい。石原アップの長台詞の演技はイマイチだが。ちなみに、司ら被害者宅のお手伝いさんを、戦前からの映画スター、堤真佐子がやっていて、この人も電話対応、記者応対などで良く目立つ。

 もう少し配役について記す。警察側の主任刑事は志村喬。部下の刑事に伊藤久哉。石原の上司(社会部長)は小沢栄太郎で先輩記者には多々良純がいる。ライバルの大手新聞社の記者は仲代達矢。仲代は石原に比べると、ずっと倫理観の高い記者を演じる(警察署の外壁の窓から、志村と司とのやりとりを、盗み聞きしたりするシーンはあるが)。そして三船敏郎が特別出演でワンシーンのみ登場する(役柄は伏せておきます。三船が登場すると、映画館内がとても沸きました)。

 終盤、石原のアイデアで、新聞配達の少年たちを使って独自に犯人捜査を始めるのだが、少年たちのカットを繋ぐ部分は、早朝の感じがよく出ている。ひとりの少年が怪しい男を追う場面では、川の側の道をクレーン移動で見せるカットがある。原っぱの中を歩くロングショット。男はサルベージ船へ入って行く。飛鳥山、王子あたりの設定なので、隅田川か、石神井川か。川をさらう、パワーショベルが、画面の殺伐さを増す。このあたりの画面造型は鈴木英夫らしい。 ラスト近く、石原は司葉子に頬を叩かれる。また、新聞社上層部からも叱責されるのだが、しかし、全く(?)反省も改心もしない、という、ふてぶてしさ。このピカレスクな人物造型も、映画らしくていい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう

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