[コメント] 亡国のイージス(2005/日)
劇中のワンシーン、飛行中の自衛隊機と管制官からの指示とのやりとりが英語で行なわれる場面で、「武器の使用を許可する」とか「Say again(もう一度言ってくれ)」といった台詞がありますけど、あれってやっぱり、押井守監督の『機動警察パトレイバー2』の引用なんですかね。他にも、「この国の平和とは、何だ?」とか、「平和とは、戦争と戦争の狭間にあるものだ」とかいった会話や、「これは戦争だ」と念を押す所など、『パト2』で同じような意味の台詞があったのを連想せずにはいられませんでしたね。
自衛隊を縛る専守防衛の矛盾を軸に、現代の日本で「戦争」状況が起こるとは、どういう事態か?というのをリアリスティックに描こうとしている姿勢など、『パト2』と共通するテーマを抱えた映画ではあります。ただ、『パト2』にあった、或る種、冷めた目線というか、距離感というものがこの映画には無く、いつも通りの熱血自衛隊映画に成り果ててますね。『パト2』は、その距離感があったからこそ、「戦争」という派手な状況を採り上げつつも、僕らの現実と地続きな日常性を取り込むことに成功していて、そこに名作の誉れ高き由縁の一つがある筈なんですけど。
或る種の命令が下った際に、「Say again」と聞き返すのって、ひょっとして、実は自衛隊の慣行なんでしょうか。まぁいずれにせよ、この言葉に込められた戸惑いや躊躇は、『亡国のイージス』を貫く主題のようです。敵の先制攻撃を待つ専守防衛では、不測の事態に対応できず、守るべきものも守れない。しかし、何の躊躇いも無しに人を殺せるというのは、果たして正しい事なのだろうか、という問い掛けが、様々な場面で提示され、その緊張感は、事態が終幕を迎えるギリギリ直前まで持続する。
とは言えこの緊張感も、映画自体が余りにも「普通のアクション映画」の枠を抜け切れず、全てお約束通りに展開していくものだから、それが孕むテーマ性は、一般の観客に対してはややボカシが入った感じになっていたんじゃないかな、というのが、気懸かりな点です。アクション映画として「それなり」に出来ているのは、邦画としては珍しいのかな?だからといってそれだけでは、点数はやれないですね。
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