[コメント] 兵隊やくざ 俺にまかせろ(1967/日)
本作以前の5作品での「兵隊やくざ」というネーミングの「やくざ」の部分は大宮一等兵の破天荒な生き様で充分に描かれてきた。対して「兵隊」の部分はと言うと上官に対しての「一兵卒」という意味合いで描かれてきたに過ぎない。
それは軍隊の内務班生活という過酷で非常識な日常と、軍律という名の絶対的な階級社会へのアンチヒーローとして大宮一等兵は存在していたのだ。
それが第6作目の本作で大きく変わった。
前作でソ連軍の満州侵攻という状況で戦争という設定が終わってしまうという危機感からか、時間を若干巻き戻しての独立した作品に仕上げている。対戦相手は中国のゲリラとなっている。
本作の大宮一等兵はゲリラ相手に軽機関銃を乱射し、手榴弾を投げ、「敵」をバタバタと殺していく。シリーズで決して観る事はなかった大宮一等兵が描かれていた。これまでの「敵」=上官・軍といった構図から「あっさり」と抜け出てしまった。私はこの「あっさり感」がシリーズ愛好家にとってあまりにも無頓着なのではないかと思うのです。
大宮と有田のふたりは戦争なんかが馬鹿らしくて嫌いだったんだ。だがそんな個人の感情なんかが尊重されるべくもないのが軍隊だし、そんな時代・状況だったのだ。そんな中でも大宮と有田は作品中では「理由もない殺人」である戦争での殺し合いはしなかった。もしくはそういうシーンはなかった。
そんなシリーズでの決まり事が、こんな大事な決まり事が、こんなにあっさりと覆ってしまって良かったのか?このシリーズの育ての親である田中徳三監督がそこまで慎重に考慮して本作を撮ったとは到底思えなかった。思えなかったからこそ残念で堪らないのです。
大宮一等兵という日本映画史上稀にみる愛くるしいキャラクターがたった1作で変貌させられてしまった。まさにこの1作で彼は「兵隊」になったのです。彼はサンダース軍曹でもランボーでもないのだから、彼は愛すべき「大宮一等兵」なのだから・・・
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