[コメント] ロミオとジュリエット(1968/英=伊)
オリビア・ハッセーは確かに美しい。彼女に惚れた、などというとまるで犯罪者になった感じがしそうで怖いほどだ。けれども。
映画としては三流どころか五流もいいところだ。決してつまらなくはなく、厭きも来なかったが、全体を覆いつくす平坦さ変化のなさにはウンザリした。ダイジェストのような印象があるが、長い。どっちつかずだ。何よりも鼻につくのは演劇臭さ。台詞回しは明らかに映画のそれではなく、演劇を丸写しに映像化したという感じだ。演劇に源を発しているからこそ、「演劇」から脱却し「映画」に変容しなければならなかったのだ。定番のセリフ(何故あなたはロミオなの)ぐらいは有りにしても、大仰な決めゼリフの多用にはいささか参る。確かに巧緻な言葉遣いが続いているけれど、リアルではなく心には殆ど響いてこなかったのだ。パッションも何もない。群衆の扱い方(歓声がわざとらしい)も下手糞だ。
この映画の目的は何なのだ? シェイクスピアを蘇らせ賛嘆することにあったのか。否、違う。そんなことは演劇人がたっぷりやっている。本作はシェイクスピアを賞賛するどころかむしろ貶めている。物語を「映画」という異なった器に無理矢理押し込めて。この映画は観客を胸キュン(表現古!)させるべきだったのだ。原作を映画的に加工し、オリビア・ハッセーという(見ているだけで胸キュンだ!)最高の素材を使えば、極上の胸キュンを生み出すことが出来たはずだ。世界は彼女を中心として回るべきだったのだ!
彼女の魅力はまだまだ生かされていない。登場シーンの美しさに心臓を打ち打ち抜かれたけど、まだまだできたはず。もっともっと惚れさせてくれたはず。そこが悲劇だ。彼女ほどの美しさを、誰かがそれにふさわしい傑作を作って記憶させるべきだったのだ! もうやり直しが効かない。あの美しさは二度と手に入らない。
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