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[コメント] 勝手に逃げろ/人生(1979/スイス=仏)

劇映画としてしっかり構成されている。そんな中でもだたの劇映画ではなく、スローモーションや空のイメージなどゴダールのごだわりが他とは違うものを作っている。ゴダールのフィルモグラフィにおいて重要な一本だと思う。
Keita

**ネタバレ注意**
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 ゴダールが長いブランクを経て(とは言ってもビデオ作品は多く撮っていたが)、久々に監督した劇映画である本作だが、劇映画としてしっかりした作りを持つ。 ドニーズ、ポール、イザベルという3人の人物の人物描写が丁寧に行なわれ、クライマックスでしっかり束ねられる。人間関係における悩みなどを日常から抽出し、それが画面を通してきちんと伝わってくる。

 しかし、ただ物語を進行させ、人間を描写しているだけではないのが、もちろんゴダール作品である。唐突なタイミングで使用されるスローモーションによる映像処理が「時間」や「瞬間」の意味を問い、ゴダール特有のイメージとしてこの映画でも美しい空のイメージが挿入され、演出家ポールの苗字がゴダールであることによって自らの映画監督としての哲学を台詞として投影させるなど、独特の試みがなされ、ゴダール映画の魅力を存分に放っている。

 また、まだ若いイザベル・ユペールが娼婦役を好演している。気だるい雰囲気を漂わせ、現状への不満感などをよく表していた。

 ちなみに、ゴダールはこの作品を第二の処女作と位置づけているが、内容やその後のフィルモグラフィーを考えてもそれは納得できる。しかし、「処女作」という言葉に反応してあえて『勝手にしやがれ』と比較してみる。すると、クライマックスでジャック・デュトロンが車に撥ねられて死んでしまうシーンが、どこか『勝手にしやがれ』でベルモントが路上で撃たれて死んでしまうラストシーンと重なって見えた。不思議なものだ。

(評価:★4)

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