コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 愛についてのキンゼイ・レポート(2004/米=独)

キリスト教的価値観からセックスの抑圧と開放を描いた映画。 とってもアメリカ的な変な映画だと思います。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大前提として、アメリカのキリスト教的価値観からセックスを抑圧する背景があったのだろう。 しかし、博士に相談に来る若者や、博士の親父さんの少年時代のエピソードなどに見られるように、その抑圧の術は、間違った教育、肉体的な矯正しかなかった。

その結果、抑圧経験者の反作用は激しくなり、精神的な鬱積がやがては別な形で肉体的な開放を見出すに至るという悪循環。 博士がアメリカ人の多くにバイセクシャルの傾向があると分析したのは、このような社会的背景があったのではないか?と思う。 従って、私にはあのデータに汎用性があるとは思えない。 まぁ研究的にはそれで十分なのかもしれないが・・・。

それと、博士の研究も、キンゼイ博士だから出来たのではなく、博士がアメリカ人だから出来たものだと思う。つまり、セックスのデータを取られる側にも取る側にも、それを抑圧する社会にも開放しようとする博士にも、アメリカ人の筋肉質で肉感的な感性を感じてしまう。 キンゼイ博士の取り組みの理屈はわかっても、腑に落ちない部分があるとすればそこではないだろうか? 博士の妻(ローラ・リニー)だけには異質な柔軟性を感じたけれど、これがまたピンとこない。

他の国、例えば日本では、恋愛に不自由さはあったかもしれないが、セックスの抑圧はなかった、と言うよりもその必要がなかったと言うべきだろう。そして、その研究を試みる者も出てこないし、聞いてほしい、知りたいと望む者もほとんど出てこなかった。日本ではモラルが性に対する抑圧も開放も抱合していたんだろう。

要するに、題材が変わってるから気になって観たけれど、この研究テーマはアメリカでしか通用しないものだ(そこでも駆逐されたわけだが)、って気がする。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)tkcrows[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。