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[コメント] 戦争のない20日間(1976/露)

フルスタリョフ、車を!』の監督らしく、これは反体制的に撮られた作品だろう。延々とメロドラマを垂れ流す一方、肝心の描写は一瞬で終わる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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相当に好き放題の撮影で、序盤の客車、妻の浮気の告白を顔アップで延々撮るのが凄い。中年同士の浮気の切ない描写もそんなものだろう(瓦礫の街の描写は強烈だが)。一方、肝心の描写は一瞬で切り上げる。客車の上に朝日が昇る。馬の大群が平原を行く。サンタがユーモラスに登場する。箆棒に美しいショットは一瞬だけなのだ。この呼吸は観客に教えるように示し続けられる。

そしてそんななか、懲罰委員会の不当などの告発も一瞬だけ示される。まるで検閲官が見逃すのを期待するようだし、もし見つかってもここだけカットすれば映画は全体を損なうことなく完成すると云っているかのようだ。『フルスタリョフ』を予告するようなパーティは爆撃に見舞われるが何事もなかったかのように再開され、どれが現実か虚構か判別不能となる。

軍需工場での一致団結を訴える講演(演奏される曲はジャイアントロボに似ている)に対独団結のニュアンスは、いつものソ連映画の直情径行はなく微妙なタッチ。ラストの平原で爆撃を受ける件ベルリンは遠かったの感慨も印象的だ。全体にインテリの戸惑いというニュアンスが濃い。シネスコサイズは見事なものだが、横に字幕出すのは見難い。

(評価:★4)

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