[コメント] 花咲く港(1943/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ペテンにコロリと騙される島民たちは、同じように戦争の正義も頭から信じてしまう。ある意味、この作品に登場する当時の日本人は皆、よく言えば物分かりがいい、悪く言や単純な馬鹿だ。実際、なかなかペテンに騙されようとしない網元(?)・ハヤシダ(東野英治郎)に向かって、馬車屋(?)・ヌバタマ(笠智衆)が「分からず屋!」と非難するシーンがあった。木下恵介は後の『二十四の瞳』なんかを観ると、時流に合わせて変節できる人物に思える。たぶんそうだ。でも、この人たちはもしかしたら騙されたフリをしているだけなのかも、あるいは積極的に騙されようとしている人たちなのかも、と見える余地がある。こんなペテンは大きな都会では通用しない、とするならば、戦争の正義はどうだったのか、なんて考えさせられる。
映画としては、真性の悪人ではない2人の「詐欺師」のあわてふためきぶりと乗り切りぶりに緩急があり、リズムよく観られる。ラスト、「船が完成したら、俺たちは自首しよう」という伏線はあったが、それでも進水式の当日、社長と専務の2人がいないことに気づいた島民らがザワつく、てなシーンを挟んで観る者に「あれ?どうなったのかな」と思わせる。場面展開が上手いなあと感心させられました。
見るからに善人ヅラの上原謙はともかく、小沢栄太郎は根っからの悪党ヅラ(失礼!)。だが、そのギャップを埋める芝居力が凄い。1,000円〜2,000円を騙しとるぐらいで良心の呵責なんて感じないよとうそぶく直後、騙しとる総額が5万円に及ぶと知ると急変し、5万円も騙しとられた側は「怒るだろうな」と青ざめるシーンなんて、滑稽で愛嬌まであって思わず笑ってしまった。
太平洋戦争は真珠湾攻撃で始まったと認識してるが、当時の日本国民にはまずマレー作戦の勝利が伝わり、真珠湾は追って半日後ぐらいに伝わったのだ。こういうことって、案外知らない。
80/100(23/4/30見)
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