[コメント] ゼイリブ(1988/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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男がある日見つけたサングラス。そのサングラスをかけると、今まで見えなかったものが見えるようになる。あらゆる本には「OBEY」つまり従え!と書いてあり、社会の上層部にいる人間はほとんどエイリアン。既に人類は宇宙人によって支配されていたのだ。そして男は人類に警鐘を与えるべく立ち上がるのだ!イエーイ!・・・(甘崎庵さんのあらすじを大幅参考)
それが『ゼイリブ』という映画の要約であり、そのすべてだ。つまり、ジョン・カーペンターはバカだった。
「実はこの世界は何者かに支配された虚構の世界であり、本当の世界を取り戻すために選ばれた人間がオレなのだ」という『マトリックス』にも引用された(ウソです)陰謀史観は浅はかで安直な極論だが、しかしその浅はかさこそがすばらしい。主人公を演じるロディ・パイパーは元プロレスラーで、ただそれだけの理由で途中無意味なプロレスシーンが挿入される、というテキトーさだが、しかしそのテキトーさこそがすばらしい。とにかく、それら『ゼイリブ』すべてのバカさ加減が本当にすばらしい。耐性がない一般人には致死量寸前の劇薬だが、最後にバカは勝つ、それが定説だ。
ただ、今改めて考えれば、「実はこの世界は何者かに支配されている」かもしれないという思想は当時の冷戦構造に端を発する文明批判、サングラスを掛けると本当のことが見えるというのはサブリミナル・コントロール批判つまり強烈なメディア批判など、『ゼイリブ』は反=80年代体制映画でもある。そして、肥大化をつづけるハリウッド大作映画=体制権力に中指を突きたてたアメリカン・ニューシネマを思わせるラストシーンは、マジで死ぬほどカッコいい。 だから僕は、死ぬまでジョン・カーペンターに従いつづけるのだ。
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