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[コメント] 酔いどれ天使(1948/日)

ブライアン・フェリーのような三船。何度見ても三船と思えない。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この医者はむしろ三船の役回りじゃないか、と思ったが三船には柔らかい知性が出せない。医者の仁義に重きを置くばかりに、現実の医者から離れてしまう人物像。ブラックジャックのヒントになる人物像だ。この時代の黒澤の映画を見ていると、昭和30年代に流行った貸本屋まんがの劇画を思い出す。

さいとうたかをはもちろんの事、辰巳ヨシヒロ、K・元美津、佐藤まさあきなどの「影」「街」といった貸本まんが雑誌に作品を書いていた作家たち。殺し屋やピカクレスロマンの作品だが、主人公の性格、図柄の構図、ストーリーの進行などこの時代の(黒澤)映画の印象が大変つよかったのではないか。それは遠くつげ義春にまで及んでいる。

1948年は太宰が入水自殺した年である。太宰はこの映画を見たのか、ぎんが松永に向ける感情はそのまま太宰が受けた愛情だと思われる。セーラー服を着た香山美子の扱いもうまい。敗戦後の軸足が香山美子が表す方向へ舵を切っていくことをよく表している。悪夢の表現も最初の一コマは象徴的で良かった。遠く雲間から暗い海に光が落ちている。手前の波打ち際に棺桶。それを斧で割っている男。

価値観も含めて戦後風俗をよく写した黒澤現代劇の佳作と言える。

(評価:★4)

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