コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 羅生門(1950/日)

文芸的なあまりに文芸的な
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







話なので、画面を見ていて芥川の文章が聞こえてしまった。藪の中は読んでいなかったのに。そして私はこの真実にまるで関心を抱かなかった。夫が妻を目の前で強姦されて死んだ。それは事実のようだ。それ以上の動機、各人の事情には関心がない。そこに人間性の本質をみようとする「文芸的」な作りがつまらない。藪の中の話をすばらしい羅生門のセットの前で語らせる、この仕組みは観客を藪の中という世界に引き入れるためのサービスだが、映画的には不要だと思った。

画面は素晴らしい。芸術的あまりに芸術的な画面の美しさと迫力。

そして役者。三船はトムクルーズのように三船だった。役を超えて役者の存在感だけで見せる役者。京マチ子よりやはり若尾文子。田中真理よりも白川和子。ま、そういうことです。

ベルリン映画祭、黒澤が映画で世界に認められた。この前年には湯川秀樹がノーベル賞。この数年あとに力道山はシャープ兄弟を空手チョップでやっつける。このころはもう本当に世界に受ける、というのが敗戦国ニッポンの一大事だった。その流れは今に至るまで続いている。一等国として世界に認められたい。それを映画で満たしてくれた黒澤は天皇と呼ばれて然るべきだ。画面の力は別として、なんでこの話が外国人に受けたのかわからない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。