[コメント] 熊座の淡き星影(1965/伊=仏)
過去に縛られる者に未来はない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画では、白い布に重要な意味があると思った。まずは、故郷に帰った主人公が、風が吹く夜の庭で白い布にかけられた銅像を見つける場面。次にラストシーン、同じような構図で、風が吹く晴れた庭で除幕式が行われる場面。除幕式で銅像の白い布は取り払われるが、そこに白い布で全身をまとった人物がいる。主人公サンドラだ。まるで白い布で覆っていたものが、銅像からサンドラ本人へと移ったかのように。布が覆っていたもの、それはサンドラの過去であり、彼女は近親相姦の理由を父親に被せることで、自分自身の罪を覆い隠そうとしていたのではないだろうか。そしてサンドラは隠していた自分の過去に向き合い、過去の罪を受け入れることで、新たな一歩を踏み出す。二つの場面が夜と昼で対比しているのも、闇に隠していた自分の過ちを白日の下に受け入れたことを示唆していると解釈した。
一方、弟ジャンニは過去から抜け出せず、過去という毒に身を滅ぼす。自分の過去に固執して生きるか、それとも過去を受け入れ前へ進むか。これは現状維持か、変化を受け入れるか、というヴィスコンティの一貫したテーマである。
弟の死は、この後の姉の人生に影を落とすかもしれない。だが、姉が後戻りすることはもうないだろう。死は一つの時代の終りであり、新たな始まりでもあるのだから。
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