[コメント] 遠い国(1954/米)
ウィルクもイーラム同様、科白は殆どないが、ギラギラして、いかにも強そうな感じが『シェーン』のジャック・パランスに通じるところがある。これを見ると、ウィルクは本作の後、もっと活躍していても不思議でないのに、と思ってしまった。
ヒロインは二人いるが、酒場の女傑といった風情のルース・ローマンが、主人公、ジェームズ・スチュワートと恋に落ちる役で、運命的なラストも用意された純然たるメロドラマのヒロインだ。もう一人はスチュワートから終始子ども扱いされるコリンヌ・カルヴェで、調べると本作当時29歳という年齢だが、確かに上手く幼く作っている。彼女のハリウッドデビュー作『欲望の砂漠』(1949)も最近見たが、この映画は、24歳頃で、尚且つ全くのモンローばりのセクシー担当だったので、本作の違いに驚いた。
さて、アンソニー・マンらしい大自然の風景の取り込みは本作でも成功していて、雪山や砂金堀りといった環境を、装置として見事に機能させていく演出が見られるのだが、例えば岩山での銃撃や決闘シーンといったものはなく、若干物足りなさも感じてしまう。最も唸った演出は、馬の鞍につけた小さなベルが、スチュワートにまとわりついている、といった部分。つまり、スチュワートの乗馬での登場は、ベルの音によって登場人物にも観客にも知らされるといった演出だ。ラストの決闘前には、暗闇から近づいてい来るベルの音に、ウィルクとイーラムが過剰反応する。そして、ラストのマッキンタイアとの決闘では、酒場の前のステップを使った上手い演出が見られる。負傷して転がった二人が、ステップの床板下の空間で撃ち合う、この演出は後年の『西部の人』(1958)でも使われている。
#私がロバート・ウィルクを西部劇ファンに紹介するとすれば、『荒野の七人』の前半、コバーン登場シーンで、コバーンとやり合って負ける男の役柄をまず上げるだろう。
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