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[コメント] パリところどころ(1965/仏)

パリという多彩な舞台装置が主役のSO-SOオムニバス
junojuna

 映画都市パリの面目躍如といった舞台装置としての魅力を各々の作家の視点によって語らせるハイコンセプトなプロデュースワークが立派な作品である。バーベット・シュローダー時に24歳。製作会社レ・フィルム・デュ・ロザンジュの第一回劇場作品である。ヌーヴェル・ヴァーグの余波ともいうべき軽やかかつ辛辣な批評精神に満ちた作品群は60年代パリの空気をモニュメンタルに記録して興味深い。映画のハイライトは、第二話にあたるジャン・ルーシュの「北駅」のショッキングなラストが印象強い。記録映画作家としての豊かな経験から洞察される彼の関係性におけるドキュメンタリーの強度というものがあまりにも唐突に提示されるとき、一介の男女の行きずりの出会いという軽さから一転、当の相手が死を選択するという重さへと飛躍する逆転の説話はある恐怖の感情を想起させて相当にショッキングである。ヌーヴェル・ヴァーグを代表する一流監督たちの手による愛すべき小品たちであるが、本作では意外にもゴダールの手による第五話「モンパルナスとルヴァロワ」が、短編映画らしいアイデアに生まれた軽妙なプロットの骨格を持ち、主人公ジョアンナ・シムカスの人物造形もゴダールらしい女性描写の一面を覗かせて手堅いエンターテイメントとなっている。ともあれ、舞台装置としての魅力を湛えた映画都市は、このあと2006年『パリ、ジュテーム』2009年『ニューヨーク、アイラブユー』と、名だたる作家たちの手によって描かれることとなる。そうともなれば、次はいよいよわが「東京」の出番ではないか。2016年「東京オリンピック」開催となれば、是が非でも手掛けたい国家プロジェクトである。エマニュエル・ベンヴィにやられる前にやっておこう。

(評価:★3)

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