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[コメント] プライドと偏見(2005/英)

この物語のボリュームだったら、少なくとも3時間は必要だったと思うのですが…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 実際これは文芸書そのものだ。キャラクタの相関関係の複雑さや、心の動きの変化など、限られた時間の映画では表現が難しいものが揃ってる。これを作品として仕上げるのは大変困難。

 頑張っているのは分かるけど、話の展開があまりにも早すぎるし、設定も活かし切れてもいないように思える。いや、それ以前にこれだけの数のキャラクタを動かす次点でそれは破綻することは分かり切っていただろう。

 何よりここではエリザベスとダーシーの出会いがあまりにも都合良く行きすぎていて、それもとても不自然に思わさせてしまう。大体エリザベスがどこかに出かけると、必ずそこにはダーシーがいるって、これじゃ見方を変えればまんまストーカーものじゃないか。

 せめて三時間あれば、もう少し良い感じに仕上がったんじゃないか?いっそテレビシリーズにした方が…(と、思ったら、実際にあって、日本でも放映されてたのね。知らなかった)

 そう言うことで、物語も設定も頑張っていても、さほど褒めるべき所を持っていない作品なのだが、それがつまらないか?と言われるとさにあらず。

 先ずそのキャラクタの描写能力が高かったと言うこと。確かにあまりにも多くのキャラが出ていて、個々に魅力を伝えることは難しかっただろうけど、その中で最大限一人一人のキャラクタにスポットを当て、いかにしたらそのキャラクタの魅力を伝えられるか努力しているのがよく分かる作りになっていた。結果、心情をストレートに口にするキャラが多かったのは仕方ないとしても、限られた時間でこれだけキャラクタの情報を出せたのは評価してしかりだろう。ナイトレイはこれまでたいして綺麗だと思ってなかったけど、本作で見方を変えた。これだけ見ただけだとファンになってしまいそう。何よりヴェテランのサザーランドとデンチは貫禄。どっちも偏屈な役を見事にこなしてる。この二人にかかっては他のキャラも貫禄負けしてしまうほど。重厚な演技が大変嬉しい。

 そして何よりもカメラ・ワークがため息出るほど見事。昨今CGに頼ることが多いが、ここではあくまでアナログにこだわり、カメラの技術だけで見事に場面を表している。それは舞踏会のきらびやかな演出であったり、個々のキャラの性格付けだったりだが、久々に名人芸を魅せてもらった気分だ。特に冒頭部分の舞踏会は必見。久々に見事な逆ズームの手法を見せてもらったし、一人一人の行動を捉えつつ、舞踏会の進行を映し出す長回しの手法は、息をのむほどの見事さを見せている。まさに名人芸!これだけのカメラを見せてくれただけでも、本作は観る価値があったというものだ。エリザベスとダーシーが心を通わせるラスト近くのシーンでわざと逆光を使っているのも、最近ではあまり見られない名シーン。それにイギリスの田園風景の伸びやかさと、部屋の中の乱雑さが見事に対比されているのも巧い。演出に関してだけで言えば、本作は最高の作品と言えよう。これが観られただけでも悪く言えないなあ。

 褒めるところとけなすところがこれだけはっきりした作品も珍しいな。

(評価:★4)

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