[コメント] どですかでん(1970/日)
これは、強靭な精神が折られた瞬間なのか?
正直言ってこの色彩感覚は、正気の人のものとは思えない。初のカラーに挑むからといって、普通ここまで変質的な色彩で埋め尽くすか!?モノクロの黒澤作品とはあまりにも異質で、私はこの上ないほど面食らってしまいました。完全に以前の監督作品とは別モノです。
『赤ひげ』を撮り終えた時点で、これでやりたい事は全てやったと監督は言っていたそうだし、「赤ひげ」以降の作品は完全に別物だと噂には聞いていたけれど、まさかここまでだとは思いもしませんでした。
黒澤さんから突然力強さが消えた。それは折れないと思っていた芯が折れてしまったような、絶対的信頼を寄せていた人物の弱さを見てしまった時のような、驚愕とか失望とか色んな感情が渦巻いて、とにかく私はひどく悲しくなってしまったのです。ヒーローの不在とか、そういうものじゃない。彼が今まで描いてきた不幸はいつだって底にはポジティブな精神があった。それなのに今作は徹底的なまでにネガティブ。こんなネガティブな不幸をこんな病的な色使いで表現されてしまっては、どうしていいか分からない。
彼をここまで追い詰めた色んなものに、私は憤りを感じます。それでも辛うじてうっすらと残る黒澤イズムが私にとって唯一の救いではありました。
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09.01.08記(09.01.03DVD鑑賞)
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