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[コメント] カミュなんて知らない(2005/日)

実在した理不尽な少年犯罪からヒントを得た作品であるが、そのテーマより大学生達のダラダラとしたサークル活動や、恋愛などどこか怠惰な学生特有の「雰囲気」が上手に醸せている。時折フランス映画の様な印象。役者も脇役迄好演で、バランスを崩す危うい吉川ひなのと、シャープさと知性を光らせる黒木メイサが際立つ。鈍臭い前田愛は完璧にスクリーンで霞むが劇中でモテるのも何となく大衆心理をついている。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







監督のあれもこれも描きたい!という熱は感じるのだけれど構成力に歪みが生じて、微妙にバランスが崩れてしまった感じはある。

登場人物が多いのだが全員、個性的で隅々迄描き過ぎだし、不条理殺人を、どーんと根底に置きながらも、柏原吉川の恋愛や、暴走する大学教授本田などすべてを均一に描くので見てる方はどこにポイントを置いて良いのか悩む。

酷いのは主役だと思わせていた柏原を後半で不意に消してしまったり、劇中劇で扱っていた殺人のシーンを後半で現実的に再現しているシーン。 特に不条理殺人のシーンの再現は唐突に始まりテイストが、それまでとあまりに違うので全体的にも上手に馴染んでいずギクシャクした印象を残してしまう。 同じ描くにしてももう少しやり方があった様に思えてならない。

屋上を天使のようにフワフワと歩く吉川や、本田との会食シーンで実は人妻である事を何の躊躇も無く語る黒木などの扱いに非常にセンスを感じるだけに全体のガタガタ感が惜しい。個人的には久々に見たたかだゆうこの演技が学生たちのリアルさに一役買っており讃えたい。

大根役者は殺人鬼役を演じた中泉。役者にとって声は命だと思うのだが平板で抑揚が無く一本調子で語られる彼の台詞は鳥肌が立つ。演技指導を強化するか、吹き替えるべきだった。ところが、ラストの殺人シーンは台詞が一切無く、動きと表情だけなので見事に狂気を演じている。やはり徹底的に発声の訓練を受けていただきたい。

ところで前田の存在は必要だったのだろうか?別に柏原とライバル関係になる様な男でも良かった気がする。見た目はリアルな女子大生だったけど設定として不必要にゴタゴタ感に拍車をかける役柄だった。

トータルすると「現代」という時代のやるせない若者やギリギリの大人(本田)を上手に描けていたし、アングルとして印象に残るシーンも多々あったので★4つ。

(評価:★4)

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