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[コメント] ミュンヘン(2005/米)

日本人として、どのように対応してよいものか大変悩ませる作品だった。感動よりは衝撃が強い印象だった。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スピルバーグの最近の作品は、自らのリサーチによって明快な民族性を中心に映画を撮ろうとしているように思える。

と同時に、かつてのように、自ら企画をするというよりも、敢えて与えられた題材に取り組み研究を重ね、そして、自らの民族性を解き明かそうとしているように思えてならない。

その片鱗が見え隠れした最初の作品は『カラー・パープル』だったのだろうが、これはドラマとしての小品であって、当時彼が派手なアドベンチャー作品しか作らない、と言われていたことにたいする挑戦だったのだろう。何しろ『E.T』や『インディ・ジョーンズ』が大ヒットしていた頃のことだ。

その後彼は映画監督としてよりも製作者として多くの作品に関わり、且つ新しい才能を発掘することに力を注ぐ。

そんな派手な活動と平行しつつ、満を持して発表した作品が『シンドラーのリスト』だ。この作品がもたらした彼の民族性に対する意識は強い。この系譜が『プライベート・ライアン』を経由して、そのままこの『ミュンヘン』につながっている。

この事件についての予備知識はほとんどないが、ミュンヘンオリンピックで起きたテロ事件と現代のテロを重ねつつ、民族の争いがまったく変化していないことを言おうとしているようだ。

プライベート・ライアン』の頃から彼の作品では、血を容赦なく流そうとしているようだ。イーストウッドとともに製作した『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』もそうだ。戦争やテロに対する取り組みとして、映像で容赦のない血しぶきが飛びまくる。

これは初期の彼の作品ではほとんど考えられないことだ、いや、『JAWS』でロバート・ショーが鮫に食べられるシーンがあったか。しかし、今思えばあれは茶番だ。映画の面白さお最大限に生かすための手法であって、最近の彼の作品に出てくる血しぶきとは大きく異なるものだ。

彼がその殺戮シーンを重ね、そして血しぶきをあげるのには意味があるのだろう。それが彼、あるいは彼の家族が受けた虐待の歴史、そして彼の民族としての意識の色なのであろう。

それを思うと、彼を若い頃から支持し、彼の作品に堪能し、楽しんできた我々としてはとてもつらい、救いのない思いにさせられてしまうので。

(評価:★4)

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