[コメント] クラッシュ(2005/米=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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差別意識を肯定する映画なんだと思った。もちろん「差別バンザイ!」ってことじゃなくて、「人はそれぞれ違う人なんだから、差別する心はどうしたって消えないもの。だけど、それを受け入れた上で少しずつでもいいから解り合っていこうよ」という。そして、解り合うためなら時には激しく『クラッシュ』しなさいよと、そういう映画じゃないだろうか。
この映画を見てアメリカ社会における差別というのを理解したような気になっていいものでもないだろうけれど、丁寧につくり込まれたエピソードによってその一端を垣間見ることはできたような気はしている。
成功した黒人とゴロツキの黒人の間にも差別はあるし、差別主義者の警官を黒人が見下すのだって差別に端を発した差別だ。アラブとヒスパニックは互いに相手が「その人種」だから信用しきれないし、日系と華僑の間にだって深い深い断絶がある。人種差別を不快だと思う若い兄ちゃんだって本音のトコじゃ黒人が怖いんだ。どこまで行っても、警官は黒人がすぐ撃つと思ってんだ。
要するに、もう差別意識と差別意識が絡まり合いすぎて誰が誰を差別してるのかよく判らんと。自分と異質な人間は誰も彼も怖すぎていつ殺しちゃうかも知れんと。アメリカの社会ってのは今そういう状態なのかなと、この映画を見て私が推測してみたのはそんな感じである。
だからいっぺん、クラッシュ。ドーンとクラッシュしてみりゃ今より少しはマシになるかもよ?
ポール・ハギスのそういう提案にお手軽に賛成したくなっちゃうのは、やっぱり自分にとってこの映画そのものが他人事だからなんだろうな、と思う。もし私が半年でも1年でもL.A.に暮らしたことがあったなら、もしかしたら「現実はこんな甘いもんじゃねえ」と思うかもしれないし逆かもしれない。非凡な映画であることは疑いようがないけれど、正直、どう受け取ったらいいか判らない映画でもあった。だって当事者にとってはこれ、理解し合うか殺し合いになるかっていう命がけの問題なんだもの。
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