[コメント] デルス・ウザーラ(1975/露)
デルス・ウザーラとは、何か。
黒澤作品の中では珍しく説教じみていない気がしました。そんな域を超えているとでも言うのか。かつての黒澤であれば、もっと怒りに満ち、社会批判を前面に押し出した演出をしていたのではと思います。ですが、この作品はなんとも厳かで、静かで、張り詰めたような緊張感で覆われています。黒澤特有の怒りや力強さはどこにも感じられません。また、彼には珍しい起伏のない展開や俯瞰ショットの多用など、退屈になりがちな演出も、この異様に静かで張り詰めた空気の前では緊張感を増幅させる装置ぐらいにしかなっていません。なんだか分からんけど、彼はすごいところにまで上り詰めてしまった気がしました。
溝口なんかの映画を観ていると、このシーンには神が宿っている!などとよく思うんですが、この作品は、作品そのものに神が宿っているとすら思える。デルスの穢れなき存在は、私の理解を超えるところにあって、美しいとか崇高だとかそういう感情すら持てない。ただただ厳かで、畏れを感じる。
黒澤さんはすごいところに行ってしまったと本当に思った。畏れ多くて私にはもう二度と観る勇気がないかも知れない。
デルス・ウザーラとは、何か。神懸りすぎて、その存在が尊すぎて、答えを探そうとすると私は震えすら起こる。
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09.04.08記(09.04.06CATV鑑賞)
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