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[コメント] 燃ゆるとき(2006/日)

燃ゆる、と言うより、耐ゆる、映画でした。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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本作のどこに燃ゆると言うのか?ちょっと疑問の残る作品でしたが、セクハラスキャンダルや組合問題などアメリカでの障壁は描かれており、そんなに悪くはなかった。まぁ、これからアメリカに進出しようとする企業の話ではなく、すでに進出した企業の建て直しの話なのだから、話の持って行き所が自ずと踏ん張りどころが多い作品となるのは致し方ないだろう。

建て直しの一連の流れを見ると、リストラ、生産工数削減、マーケティングと新製品開発、それでいながら品質重視・・・と、一応、本作は一通りルーチンを踏んでいる。ただ、問題なのはそれらを可也早い段階で一通り踏んだだけであって、それらに携わる人、汗、涙、ドラマを十分に描いていない点だろう。燃ゆるとすれば、こう言った、1円1セントのコストダウンに必死になる姿であって、企業トラブルに耐える姿ではないと思うのです。

技術屋の私が期待していたところは、新製品開発や生産ライン現場の技術革新など、現地の従業員を含んだ全従業員が知恵を絞る姿だったのですが、コストに直結するこれらの部門の描写がなおざりだったと言わざるを得ない。特に現地向け製品の開発メンバーが若手一人だけ(主人公にアドバイスを仰いでいた人)で、打ち合わせに出席する幹部に開発の人間がいないのはおかしいでしょう。

それにしても主人公が資材課とは渋い設定ですね。資材部門は、部材をより低価格でより安定した調達ルートを維持することが一番のミッションで、その意味では非常に重要で、営業・開発・生産と製品ができるまでの流れから見ると、コスト削減の最後の切り札、言い換えると帳尻合わせの部門でもあるんですよね。だから、中井さんがテキーラをがぶ飲みしたのは頑張っていたとは思うけれど、それぐらい普通の頑張りのレベルで燃ゆる描写ではなかったと思う。

て言うか、私もメキシコのバーでテキーラをシコタマ飲んだ(最終日に飲んじゃった)経験があるんだけど、本作にはその臨場感がちっともない。せめて、カメラは傍観者の平たい視線じゃなくて、酔っ払っていく主人公の視線にすべきでしょう。テキーラの後の私の二日酔いは目茶目茶辛かったんだけど、主人公は頭よりも腹に来ていたようですね。それも“?”だったけど、これは個人差かな? とにかく日本人俳優の演技に頼っていて、外国人の演技と言わず、全体的に現地の描写が雑だったですね。

あと、24時間操業する上でオイルの蓄えの予備を一晩分用意していないなんて、多社購買にした以前に、資材部のリスク管理は甘すぎるでしょう。要は任務を堅実にこなしてなかったのを責任者の主人公自らが埋め合わせただけ、の話ではないでしょうか。

やっぱり、燃えられないな〜〜。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ガリガリ博士[*]

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