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[コメント] 県庁の星(2005/日)

織田裕二が「目の前の問題から逃げる人はすべての問題に対処できない」と柴咲に言い返す前、一度彼女から離れてその後円を描くように歩行して戻ってくるのを3ショット撮っている。台詞をそのまま続けて心理的な場面にするのではなくて、運動でワンクッション置いている。無駄なショットではなく、西谷弘は「アクション」を撮ろうとする。「視線」を撮ろうとする。精一杯の映画性を盛り込もうとする。
赤い戦車

柴咲コウの、傘と高低差を伴った登場。厨房で中国人と黒人が自然といて多言語が混じり、その部屋をAチームとBチームとに分ける仕切りがそのまま断絶と和解とを視覚的に表現する。店仕舞いの際の照明落としと柴咲・織田裕二の会話とを移動撮影で同時に追うことでもやはり心理ではなく視覚的な何かを表そうとしている。また、許婚から別れを宣告される際の雨と高低差による演出も「距離」を視覚的に見せてくる。或いは「手を洗つて」の張り紙。心理的な「AはBである」的な論理に押し込めるのではなく、些細ではあるがこうした視覚的・運動的な要素を通すことで西谷弘はTVドラマとは違う、「映画」を仕上げてくる。

また、「視線」も西谷弘の特色だ。織田裕二が県庁で演説する際、何故あそこまで「喋っていない人物」の顔のカットが挿入されていたか。それは会話に参加していない人物の「視線(何かを見ていることを示す)」を通すことによって、空間的な広がりをシーンに呼び込むためだ。こうした視線のカットは『アマルフィ』『真夏の方程式』などにも頻出している(ちなみにカーテンや引き戸といった、開放・閉鎖を操作可能な空間的仕切りもよく登場する)。まだ研究不足であり確証は持てないが、このような演出は成瀬巳喜男辺りの影響ではないか、と私は想像している。

少なくとも、TV局御用達監督の中では西谷弘は群を抜いて才能がある。10分映像を比較すれば確実に分かるレベルであり、これからも擁護すべき価値のある監督と思う。シネコン映画で強かに生き抜いていく術を彼から学ぼう!

(評価:★4)

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