[コメント] 二階の他人(1961/日)
また、タイトルでもおもんぱかれる通り、高低の演出は全編に亘って見どころだが、この坂道の場面においてもだ。あるいは、この道(駅からの帰路)の途中に、小坂の上司(部長)・須賀不二男の家があり、バルコニーにいる部長夫人を縦構図で画面奥に見せる見事なショットもある。
二階の間借人の平尾の細君は関千恵子。この2人もいい。関千恵子はいつでもいいが、平尾が思いの外よくやっていて驚く。また、小坂の母親の高橋とよが登場してからが、さらに面白くなる。中盤のプロットのテーマは、平尾らをいかにして追い出すか、という攻防戦だが、高橋とよは平尾と仲良くなり、花札ばっかりやっているのだ。
小坂の長兄・野々浩介と、次男・穂積隆信が家へやって来て、母親・高橋とよの居住をめぐって口論になるシーンでは、人物を手前から奥へ並べ、皆に焦点を合わせた、これ見よがしなパンフォーカスの縦構図ショットがある。
平尾らが退場した後、二組目の同居人になるのが、音楽評論家?の永井達郎と瞳麗子の来島夫妻。本作の特筆すべきは、彼らと共にするクリスマスのシーンだ。来島夫妻が、銀座からお土産(ごちそう)を持って帰って来、二階でパーティをするのだが、このパーティのデカダンな演出には瞠目させられた。2人が狂ったように踊るショットは屋内望遠ショットじゃないか?このあたり、若き山田洋次の、黒澤志向を感じる。山田洋次の正体見たりという感覚もある。山田の志向としては、小津ではなく、黒澤だったのだ。これが、山田洋次をイマイチ信頼できない部分でもある。いずれにしても、全編、画面造型の点では、かなりのこだわりを感じさせるデビュー作だ。
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