[コメント] 嫌われ松子の一生(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
前作『下妻物語』に比べると一段と悲惨な話になっていて救いがない。特に前半のコメディタッチというかアニメチックなヴァージョンからすると、後半部分はほとんど救いがない。
『三丁目の夕日』など、どうもこの年に作られた映画には、昭和の後半、つまり平成に至るまでの高度成長時代を描こうとする意識があって、しかもあの時代があたかもバブリーで夢のような時代だったという当時の現実と、そういう世間のトレンドとは全く無縁の人生がここにはあるよ、ということを物語っているようだ。
『三丁目の夕日』は逆に救いに救われる思いが残る映画と言えるが、この映画には見終えた後の救いが全くない。
前半から怒涛のようなスピードで松子の不遇な人生を一気に見せているまでは非常に楽しいのだが、刑務所から出てきて、教え子のチンピラと暮らして、さらにその教え子から見放されたあたりからほとんど救われない。
遡れば、父親が具合の悪い妹の面倒ばかりを見て、松子を振り向かなかったという思い出に松子の不遇がたどりつく。それ以来、男運の悪さがずっとついて回る。あとはエピソードの積み重ねである。
中谷美紀はよくぞこの役を引き受けたものだ。この役はもっと別の女優が演じることもできたであろうが、よくぞよくぞ挑戦したものだ。この役柄とは全く縁のないような性格のはずだが、こういう演技に挑戦できる素養を素晴らしいと思う。
中島哲也監督の才能もより一層エスカレートしているようだ。前作をはるかに上回る丹念な描写と『アメリ』を思わせる異国情緒あふれるカット割とアニメチックな表現は映画でもむしろ上質なアニメを見せてもらっているような印象を持つ。
各場面の色合いがほとんど自然光から離れて、脚色された照明により現実から引き離そうとしてる。この表現力は彼独特のものである。驚くべき斬新さである。
救われない映画にこれほど多くの方が感動するのはなぜなんだろう? 救われない人生に共感するのはなぜなんだろう。
それは、そのひとつひとつがもしかしたら自分に投影するからだろうか?それともいつか自分も同じ思いをする恐怖なのだろうか?この不思議な思いは、これまで味わったことのない恐怖といえるだろう。
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