[コメント] お茶漬の味(1952/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだそんなに小津作品を観た訳ではありませんが、この作品は今まで私が観た小津作品とは何か違う感じがしました。今まで観た小津作品は「家族」を描いたものばかりだったのですが、今回は「夫婦」というものを描いていたので、未婚の私には分からない事も多かったのかも知れません。
そもそもこの夫婦が結婚何年目ほどなのかもサッパリ分からない。何年連れ添っているかによって、妻のあのイライラの質が大分変わると思うんです。比較的新婚に近いのであれば、あれは「原因不明の不機嫌」という域を出ないと思うし、まだまだ修復可能な夫婦の溝だと思うんですが、あれが長年連れ添った夫婦であったなら「重度の倦怠期」でそう簡単に修復されるのは無理だと思う。
木暮実千代さんの演技を見て、私は重度の倦怠期の方だろうと想像しました。辟易している男子も多いと思いますが、例えば女子がよく陥る月経前症候群。そう言った一時的なイライラとは別の感情が彼女の中にあるように感じたし、ヒステリックな一時的嫌悪というより、生理的に、徹底的に冷たく、心底旦那を嫌悪している。私にはそのように映ったからです。
ラストシーンで一人取り残された彼女。私は彼女が(一人勝手に)煩わしい(と思っている)夫から開放され、気分も晴れやかに眠りにつくような気さえしていました。なので、そこからの急激な彼女の変化が、私にはものすごく違和感でした。要は彼女の表情が強すぎた、或いは演技が激しすぎたのではないかと思うのです。
私が夫婦の機微なんてものを全く理解出来ていないだけかも知れないし、恋愛結婚とお見合い結婚という違いもあると思うし、それも理解出来ていない私なので一概には言えませんが、私には木暮実千代さんは小津作品には強すぎる女性だと思いました。
それからタイトルでなんとなくラストが読めてしまったのが残念。
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08.09.30 記
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