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[コメント] カサノバ(2005/米)

待ちに待ったハルストレム監督作品!まさか艶笑ものを作ってくるとは思いませんでしたが、上手くまとめてくれました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 カサノバはヴェネツィアを中心に活躍した希代のプレイボーイで、彼の残した著作も荒唐無稽な冒険譚に彩られているお陰で映画人の想像をかき立てるのか、既に2度映画化されている。私が観たのは1927年版だったが、これはロシアにまで言って王妃との恋話という、それこそ荒唐無稽な話だったものだ。

 本作もそれに則ってコメディ、しかも艶笑ものに仕上げられている。ハリウッド流に言えばセックスコメディになるのだが、実はこれが私はどうにも苦手。どうしても恥ずかしくなってしまう。特にこれがハリウッド製のものとなると、正視に耐えないものばかり(別段セックスそのものが嫌いというのではなく、大概男と女が騙し騙され、すねに傷持つ者同士が傷つけ合うという展開が嫌い)…出来の如何に関わらず、合わないんだから仕方ない。久々のハルストレムでも、今回は外れか?

 最初の展開で「ああ、やっぱり」と思う。典型的なセックスコメディじゃないか。主人公のカサノバは次々と女をとっかえひっかえしてるが、約束のブッキングは平気で行うわ、いい加減な性格だわ。これじゃなあ。

 …しかし、意外な話ではあるのだが、中盤を過ぎた辺りから俄然面白くなってきた。コメディ部分がからっとしていて、変にドロドロしておらず、コメディも洗練されていて私の好みだ。そう言えばこういう艶笑コメディでも面白いものがあったことに観ながら気が付いた。そう言えば『ピンクの豹』(1963)とか『何かいいことないか子猫チャン』(1965)と言ったイギリスの作品はぴたっとくる。これはそれに極めて近い。なるほどヨーロッパのセンスが重要なのか。と再確認(ちなみにハルストレム監督はスウェーデン人)。

 それにキャラが良い。レジャーがプレイボーイ?と言うのは違和感があるけど、逆にああいった神経質そうなキャラだからこの作品にははまる(それこそ『何かいいことないか子猫チャン』のセラーズみたいなものだ)。どっちかと言えばレジャーよりプレイボーイ向きのコックスも重要な役どころが待ってるし、ハルストレム作品の常連オリンもおいしい役どころ。しかしなんと言っても本作ではプッチ司教役のジェレミー=アイアンズが見事な役どころを演じていた。いい加減で状況任せの人間ばかりだからこそ、こういう真面目で貧乏くじばかり引かされる役柄が映える。嫌味なキャラだけど、この人がいなければ画面に締まりは与えられなかったはずで、この人のお陰でまとまりが無くなりそうな物語だったのに、上手い具合にすっきりとさせてくれていた。

 ただ、設定のいい加減さが避けられなかったのがちょっと残念。細かい所言っていればそれこそいくらでもアラが見えてしまう…勿論それも含めての艶笑ものなのだが。

 何にせよ、大ファンのハルストレム監督は今もなお健在であることが分かっただけで充分幸せに慣れた作品だった。

(評価:★4)

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