[コメント] ローズ・イン・タイドランド(2005/カナダ=英)
現実を悪夢的に装飾し、グロテスクな「ビジョン」を構築して悲惨な現実をはぐらかすローズは真性の悪夢ジャンキーである。ローズの一種の防御手段である「悪夢」が醒めた先には何があるのか。ラストの先にこそ何も見えない現実という闇が横たわる恐ろしい映画。そして悪夢は続く(続ける)のである。うわっ、怖っ、暗っ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ラストが救済であるかどうかは、観客のぎりぎりの判断に委ねられるが、私はやはり救済には至っていないと思う。ローズの目に映る蛍もオベロンとティターニアとして映っているだろうし、老婦人に「救われて」も、彼女は「エジプトの悲劇の女王」であり続けようとするだろう。救われた安堵や涙のかけらもみせない彼女に、したたか、人として強靭などといったポジティブな評価はできない。ほとんどそれは悪夢をニュートラルなビジョンに刷り込まれてしまった悲劇であると思う。刷り込まれてしまったものをそう簡単に「修正」できるものではない。涙を見せれば救いで終わらせられるものを、そうさせなかったギリアムの非情、というか、悪趣味。「だって悪夢が大好きですから!」
悪くはないが、ギリアムお得意のズームの多用にいささか辟易。筋も平坦だし、イメージの跳躍も単に悪趣味の粋で、ラストまで驚きは見いだせない。ジョデル・フェルランドの根性には頭が下がるし、彼岸としての干潟の切り取り方は非常に良いのだが。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。