[コメント] 瀧の白糸(1933/日)
ミゾグチのサイレント期の代表作と呼ぶに相応しい神業の如き構図の連発。収束の脱落が実に残念。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『折鶴お千』で顕著になる長回しがまだ採用されていないのが確認できるが、どうせ字幕でぶつ切りにされるのだから本作の細かなカット割のほうが断然座りがよく、安定度においてサイレントの代表作と思われる。馬車の仰角、橋の上での再会の夢のようなニュアンス、殺人場面の俯瞰、どれも抜群。
内容は典型的な新派劇で情に勝ち過ぎ、お前検事なら自殺に追いやらずに情状酌量を訴えろよと思う。半円形の席に裁判官と検事が並び、弁護士が見当たらない明治の裁判の風景はとても興味深い。そんな程度の裁判だったのだろう。
さらに興味深いのは前半の、使っちまったわ、人助けは気持ちがいいねえという入江たか子の散財ぶりで、近代日本に有るまじき蓄財観念の欠如と鏡花は云いたいのだろうが、金は天下の回り物、直近の貧乏より長い目で見た互助を貴ぶ姿勢を表している訳で、昔の人の金銭感覚がよく判る。これはとても正しいことではないのだろうか。
居丈高に迫り、突然泣き、金を貰った途端に居丈高に戻る村田宏寿は爆笑もの。暴漢に貸したばかりの金を取り返させる菅井一郎(なんか菅井一郎に似た俳優だなあと思っていたら菅井一郎だった。長いキャリアに脱帽)の悪知恵は勉強になった。使いようがないが。若き浦辺粂子は殆ど目立たず残念。風呂屋におけるご隠居のギャグは意味不明、この辺りもフィルム脱落のせいなのか。
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