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[コメント] 真昼ノ星空(2004/日)

ギラギラした情熱や押え切れないときめきではなく、静かで情感に溢れた恋心は、大人になる術を失ってしまった青年の寂しくも無邪気な恋愛そのものへの思慕だ。南国の強い陽射し、吹き抜ける風、湿気を含んだ夜の闇。真昼に星空など見えはしないのだ。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







リャンソン(ワン・リーホン)は無邪気だ。それは、どこかで大人になることを諦めてしまった諦念からくる寂しさの裏返しなのだろう。しかし、彼の心の中にはまだ大人に成ることへの夢がくすぶっている。それは、真昼に星空を見るという叶わぬ願望。

由起子(鈴木京香)は、ゆっくりと動き、ゆっくりと歩く。まるで時間が進むことを恐れるかのように。もうこれ以上、他人も自分も傷つかぬように。彼女は、ギラギラした情熱や溢れ出るときめきを封印した大人の女なのだ。

少年の心を持ちながら大人の女に恋をしたリャンソンと、大人の恋に背を向けながら生きる由起子。埋めるべく溝は見えず、永遠にすれ違う運命の恋。いや、これは恋の物語ではなく、恋を思慕する物語なのだ。

そんな、微妙な情感を丁寧に描き上げた中川陽介監督の演出力が光る良作だった。

(評価:★4)

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