[コメント] 夜よ、こんにちは(2003/伊)
アルド・モロを監禁する部屋探しの場面から始まる。主人公は赤い旅団のメンバーで実行犯の中では一人だけの女性キアラ−マヤ・サンサ。彼女の職場や生活圏の描写も一部あるが、基本的にモロを監禁した部屋と家屋が、殆どのシーケンスの舞台となる。
この舞台を使って、隣人が赤ん坊を預けに来たり、突然、司祭が訪ねてきたりといった、予期せぬ外部からの接触や、モロとのコミュニケーションとメンバの焦燥、葛藤、そして覗き見のモチーフを丹念に描きながら、強固にテンションを持続させる。
そして、キアラの夢という設定(?)で始まる、膨大な量の古いモノクロ映像を挿入する手法も見事なものだ。雪とベンチ。眠る男達。列車。いつしか、キアラの夢などではない、ベロッキオによるコラージュであることを観客は了解する。中盤ではロッセリーニ『戦火のかなた』の中の、捕縛者を川へ突き落すカットも繋がれる。
タイトルは、キアラの職場の同僚が書いているというシナリオの題名で、原題や英題をひもとけば分かる通り、正しくは「おはよう、夜」だが、意味としては邦題でも察することができる、逆説的な理想と現実についての喩えだ。夜という言葉をタイトルに持っているだけあって(あるいは題材からいっても)、全編に亘って、ローキーが多い。(そもそもオープニングが暗い部屋に光を入れる場面だ。)そんな中で、キアラが職場の同僚と参加する、昼の屋外で行われる法事のパーティシーンが印象深い。男達がパルチザンの歌を唄う。そのメロディが、ロシア民謡(カチューシャ)というのにも驚かされる。
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