[コメント] トンマッコルへようこそ(2005/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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クライマックスで戦闘機に機関銃で立ち向かい、雄叫びとともに撃ちまくり壮絶な死を遂げる一人の兵士。 多くの人が「ワイルドバンチ」のウオーレン・オーツの勇姿を思い浮かべて涙したことでしょう。 しかし「ワイルドバンチ」っぽいのはそれだけではありませんでした。(以下ワイルドバンチのネタバレあり)
殺伐とした冒頭の銃撃戦、同じ仲間なのに一触即発の危機、共同作戦で勝利、仲間の死、そして自らの命を投げ出しての勝ち目のない戦いと壮絶な死。
これ「ワイルドバンチ」のプロットなんですけど、かなり似てると思いませんか?
さらに登場人物の人数も「ワイルドバンチ」では、ラストで戦って死んだ4人、マパッチに殺されたエンジェル、生き残った老人とロバート・ライアンの7人。 それに対してこちらは、村を守って死んだ5人。死んだ村の娘、そして生き残ったアメリカ人パイロットで合計7人・・・。(もう一人いたけど彼は仲間とは言い難い) 人数だけでなく、その役割も似てるように思えませんか?(特にエンジェルと村娘の重要性が) おまけにこの監督、スローモーションが好きで、戦いの合間に時折見せる詩情性、さらにエンドロールには仲間たちの幸せな笑顔・・・とくればもう彼は間違いなく確信犯でしょう。
そう考えれば、この映画がただ平和の尊さを説くだけの安っぽい反戦映画ではないことがわかります。 ペキンパー映画のモットーは、「自分の大切なものを守るためには命がけで戦え!」です。(断言) そしてこの映画の本当のテーマも、それと同じものではないでしょうか。
この映画は決して戦いを否定してはいません。ただしその理由について言及しています。 米軍の爆撃は広い意味では戦争に勝ち平和をもたらすものであり正しい行動といえます。 でも彼らは本心から平和のために戦ってなんかいません。それは兵士の命も市民の命もないがしろにした「戦いに勝つための戦い」でしかないのです。
それに対し、村を守った朝鮮の兵士たちは上から押し付けられた命令ではなく、「自分たちの大切なものを守るための戦い」をしたのです。 自らの心から生まれた気持ちに突き動かされた行動、それは、ただ金のためにしか動かなかった「ワイルドバンチ」たちが、エンジェルを守るために立ち上がった姿に重なって見えはしませんか? もちろんこの映画はペキンパーのただの焼き直しではありません。ペキンパーの激しさに監督独自の詩情性と自らの理想(朝鮮統一)を融合させた、いわゆるリ・イマジネーション(いつか言ってみたかった)であり、この作品を作ることが監督自らの「自分の大切なものを守るための戦い」だったのではないでしょうか。その熱い気持ち、「ワイルドバンチ」が大好きなペキンパー信者のハートに、きっと届いていると思いますよ・・・って俺だけか。
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