[コメント] クリムト(2006/オーストリア=仏=独=英)
今は焼かれて写真しか残っていない『医学』と名づけられた絵画の登場からスタートした冒頭部に続いて、矢継ぎ早に、クリムトやシーレ本人によく似た重要主題(俳優が演じている)がやたらに登場する。しかし、似ていることに関する考察の気配が薄い弛緩した姿勢に深く失望。
オリジナルとその模像とが似ている、というのは当たり前のようでありながら実は少しも当たり前でない。具象絵画において、あるモデルを使って描いた過程で取り込まれた誇張や省略や改変にこそ芸術の本領があるのだとすれば、模写作品がオリジナルに似ていないことのほうが多い。オリジナルと模造が似ている場合にしてもそこに芸術上のねらいがあるから似せられているのであって、それは単に似せた結果ではない。単に似ているだけのものは「贋物(にせもの)」としか呼ばれないのだ。その意味でこの映画は典型的な贋物作品なのである。「似せる」以外に主体的な営為がこの作品にあったようには正直感じられなかった。
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