[コメント] 女は女である(1961/仏)
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アルフレッドが、アンジェラと一緒に行った店で金が無い事に気づき、店主を巧く丸め込む場面で、彼は次のような二者択一を店主に迫る。「俺の質問にウイと答えたら、金を貸す。答えがノンなら、俺が金を借りる」、「金を貸してくれ」。そこで店主が「ノン」と言ったので、「金を借りるぞ」と言って店を出るアルフレッド。これと同じ事を、アンジェラがエミールに対して行なうのだ。つまり、「子供が欲しかったから、アルフレッドと寝たわ」、そしてアルフレッドは「子供を作る気で君と寝れば、僕の子供だという事になる」。理屈としては無茶苦茶なようでもあるけれど、浮気や売春という要素が絡む事で、「自分のパートナーに、誰を選ぶか」に揺れる男女と、自分のそうした気持ちの揺れにも関わらず、相手へは嫉妬してしまう、という事、そしてこうした関係の不安定さ、動揺があるからこそ、「今だ」という瞬間に、関係を結ぼうとする、なんとも複雑怪奇なこの男女のシステム。
こうした、「クレタ島人は嘘つきだ」と言うクレタ島人のパラドックスのような、ロジックでは宙ぶらりんにされてしまう、心境と状況。更に、このパラドックスを巧く利用して、自分の都合の良いように行動する男と女。これはまさに、喜劇か悲劇か分からないが、傑作だ。コミカルな痴話喧嘩の中にも、「あれか、これか」を選べないままに、むしろその矛盾や葛藤に衝き動かされて事態が進んでいく男女の関係を、シャープに描いて見事な作品。
尤も、痴話喧嘩は痴話喧嘩なので、初見では途中で退屈して、寝てしまいましたけど。
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