[コメント] パプリカ(2006/日)
見ていて怖いと思ったのは、今夜からでも俺の夢にこのパレードが登場するのではないかということ。意識して、というより無意識的になのだが、意識のより深い部分にあのパレード映像が刷り込まれないよう、心のある部分をシャットアウトして見ていたように思う。そのおかげでか、これまで一度も夢に出てくることはなかったが、見て数週間たつ今振り返ってはっきり分かる。俺は、俺自身があのパレードに参加したかったのだ、と。この映画の幾人かの登場人物らと同じように、己の意識下の欲望を好き勝手に肥大化させ、奴らと一緒に行進したかったのだ、と。きっとそれは、めくるめく快楽の体験であるに違いないのだ。否、俺はそれがめくるめく快楽の体験であることを<知っている>。
映画を観るとは、あのパレードに自分も参加することなのであり、映画とはそのように観るべきものなのだと、今では強く感じている(・・・違うかも)。
映画を観たのち、初めて筒井康隆の小説版(原作)を読んだが、正直言って映画の方が面白かった。小説の方が作家の妄想により忠実に寄り添っていて、ゆえに妄想度は高いが、客観性は低く、幼児性が高い。他人の夢話を聞かされる退屈さがふんだんにある。映画化にあたり、小説世界を小説では描かれないディテールによって敷き詰めていくという作業が、丁寧に、根気強くなされたのであろう。原作映画化のお手本のような作品ではないかと、あらためて評価を高くした。
公開当時特に見に行こうとしなかった理由の一つは確かに、ポスター等で見たパプリカちゃんの造形にさほど気を惹かれなかったから、ではあろう。だが映画では、「可愛い」という記号として機能していれば十分なのだということが、見ていてわかりました。
ただ自分は、もしあのパレードに参加していたとしても、裸のパプリカちゃんが止めに現れてくれたら(そんなシーンが映画内にあるわけではないが)、そこで目が覚めるタイプなのではないか、という気はしている。
85/100(11/01/16...平沢進のテーマ曲が頭の中で掛かるなか書いた)
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