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[コメント] アリスの恋(1974/米)

ここでもスコセッシは未来に絶対的な希望を与えない。
ナム太郎

スコセッシの映画には苦い後味を残すものが多いという印象があるが、一見ハッピーエンド風に終わる本作も自分には完全なるハッピーエンドには思えなかった。

劇中アリス(バースティン)に「奥さんがいるのね」と聞かれたデビッド(クリストファーソン)は語る。

「2年前に別れた。妻が子どもを連れて出てった」

「うまくいかなくなり、彼女が出てった。俺も止めなかった」

聞き流したらそれで終わりのような台詞だが、最後アリスが一緒になった男は過去に妻子が出て行くのを止めさえしなかった男なのである。こわい台詞だと思った。

しかし、そんな彼女にも苦楽を共に分かち合ってきた最愛の子どもがいる。それがたとえ小生意気なガキであっても、彼は彼女にとっての最後の砦。そんなことを示唆して終わるラストには、何とも言えぬ余韻を感じた。

ただ、全体的な出来としては当時の世評ほどには良いとは思えなかった。演出は特に技法的な点で試行錯誤の感が強い。

スコセッシが彼独自の作風を確立させたのはやはり『タクシードライバー』以降か。

タクシードライバー』といえば、そこでも強烈な印象を残すジョディ・フォスターが、本作でも不思議な存在感を示して印象に残る。

(評価:★3)

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