ファンの間で賛否が分かれているのは、アキヒロを外国人扱いにしたこと。原作原理主義者がとびつきやすいネタなので、致し方ないとはいえ。中国人労働者であるがゆえにのけものにされ嫌がらせを受ける。ベタな設定ではあるものの、狙いは悪くない。ただし、ミステリ要素も取りこぼさないようにするためかアキヒロを血気盛んな性格に設定にしてしまったのは、やややりすぎか。チェン・ボーリンは朴訥な青年ぶりが出ており好印象。田中麗奈も初心にかえったかのようなメイクもさることながら繊細な役を好演しているので物語が破綻することなく結末を迎える。

もともと原作が小説ならではの題材で、映像化してしまうと地味になってしまうのは致し方ないが、個人的にはもう少し見終えたあとのインパクトがほしかった。長尺の割にはミステリ部との兼ね合いがあったせいか、前半と比べて後半が駆け足に。ミチルがアキヒロを信用する要素としての真面目な人間性を描ききれてなかったところもある。それでも、観終えたあとはおおむね好印象。なによりも優しい気持ちになれる。