[コメント] 我が家の楽園(1938/米)
理想主義の陽気な自由賛歌に見えますが、作中でもライオネル・バリモアにイデオロギー原理主義をさらりと批判させているあたり、根底に流れるのはリバタリアニズムでしょう。するとあの一家の破天荒ぶりは自虐ジョーク。これは確信犯的プロパガンダ映画では。
他者の身体や財産を侵害しないことを前提に、個人と経済の自由を最優先に重視するのがリバタリアニズム。言いかえれば、俺はあんたが何をしようが絶対に口出ししません。そのかわり俺は俺でしたいことを好き勝手にするからほっといてくれよ、という考え方。警察や公立の学校、あげくは政府の存在も否定する徹底した自由至上主義。本作の主人公も“気に食わない”という理由で税金を払ってなかったですね。
この考え方、アメリカ合衆国の成り立ち由来するものですが、私たち日本人にはとうてい理解しがたい。だからこの映画を、理想主義を喝破するヒューマニズム物語と絶賛するか、現実感のない安直な楽天主義と非難する二派に別れる。で、お前はどっちなんだと問われれば、この割り切りの良さを手放しで賞賛する気にもならないし、といって、実は小馬鹿にして否定するほど嫌いじゃないです。
ということで★4つは、本作の思想性にではなく、脚本のロバート・リスキンとフランク・キャプラの周到さと、したたかさに献上します。
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