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[コメント] ダーウィンの悪夢(2004/オーストリア=ベルギー=仏)

悪夢としての資本主義の進化。ショッキングな映像は見ものなのだが、やや説明不足な点が眠気を誘う。080106
しど

ドキュメンタリーの手法としては、娯楽要素を織り交ぜるマイケル・ムーアがワンステップ進めちゃったから、もう、こういう古いタイプのはどことなくとっつきにくい。その上、武器輸送に対する執着に比べて、背景自体の詳しい解説が無いので、多少の予備知識が無いとイマイチわかりづらいかもしれない。

とはいえ、映像が語りかける事実の重さは十分に伝わってくる。食べ物を巡って殴りあいを始める幼いストリートチルドレン、ウジのわく魚処理仕事の果てに片目を失った女性、そして不幸な売春婦。頭上には、魚を運ぶ最新鋭の輸送機が昼夜を問わず絶えず行き来する。一体、何時の時代なのかと不安になるような映像の数々。

グローバルな資本主義は、ナイルパーチのように獰猛だ。バランス良く地域に根付いていた資産を食い荒らして大きくなり、収穫するのは常に欧米の白人国家である。食い尽くした後は、また次の場所に行って獲物を探す。

植民地統治の特徴は、輸出商品生産の重視による食料自給率の低下である。自給できないということは、外国から穀物を買わなければならない。結果、支配国に輸出する食料を生産し、自らの食料は輸出で得た金で輸入に頼るというイビツな依存状態が形成される。そして、植民地という直接統治ではなく、「グローバルな基準」というルールで支配するのが、現在の資本主義世界だ。「自給率」から統治・被統治を判断すると、日本も他人事ではない。

何かを語ろうとするといろいろと思い当たるシーンは多く、細かく見ていくと見所は多いのだけど、やや断片的過ぎて面白味に欠けるのがこの作品の残念なところ。

蛇足ながら、あら煮やヒレ酒の魚食文化国民からすると、加工後の余りが腐ってしまってる映像を見て、加工工場の近くに処理施設を作れば現地向けの商品化も十分可能なんじゃないかと、ビジネスチャンスを思う。資本主義には、銭の為に創意工夫を凝らすという良い進化もあるからね。

(評価:★3)

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