[コメント] どろろ(2007/日)
原作を見事によみがえらせた。ゆえに手塚治虫的な世界が随所にあらわれ、映画としての陳腐さを露呈しているが、本筋を見落とさずに描かれていて好感が持てた。役者陣も見事だった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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採点はともかく、好感が持てる映画だった。この塩田監督の演出は『黄泉がえり』以来見るものだが、いずれも生きることの執着を描いている。
この映画では手塚ワールドを踏襲していて、マンガの世界を映画化することを主眼としている。しかし手塚治虫のマンガには必ず本筋となる深い主張がなされている。この原作では、戦争の無意味さを主張し、戦争中に産み落とされた悲しい境遇の子供が無意味な戦国の世の根底をくつがえそうと生きてゆくのだ。
この原作が書かれた1969年といえば、日本が高度成長の波に乗り、世界ではベトナム戦争のさなかで、アメリカで『ウッドストック』が開催され、2度目の日米安保条約の反対運動が起きた頃である。
そんな時代のこの原作が40年近いときを越えて映画となってよみがえった。
しかし、時代は変わり、成長も小さくなった日本は”家族”という絆を失い、親が子を捨てる世になってしまった。まさに今、『どろろ』の世界が別の意味をもたらす世の中に変わってしまったのである。
さて、この映画にはいくつかの見所も多いが、他の映画のパロディーとも言えるシーンも見受けられる。
冒頭の百鬼丸のマントは『スターウォーズ』から、戦国のシーンは『天と地と』あるいは黒澤監督の『乱』を思わせる。醍醐家の城は『千と千尋の神隠し』の油家にも思える。そんな楽しさが盛り込まれている。
映画館で見ればもっと楽しかったと思う。見ごたえのある映画だった。
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