[コメント] 幽閉者 テロリスト(2006/日)
新左翼の暴力路線は終わっているなあという今更な事実の確認。何が自分のコピーだ、そんなもの望まれちゃいないよ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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拷問で意識朦朧とするなか、主人公は「出発点に戻るんだ」という言葉にしがみつく。ここはとてもリアルでいい。彼は自分の出発点を必死に探す。しかし出てきたのは何のことはない、自分が逮捕された際の手榴弾による自決なのだ。そして収束では訳の判らない実存主義的な観念が羅列される。活動内容などどうでもよく、全ては自分の革命戦士としての心情にしかない、というように。「死のう団」が引用されるが、だから右でも左でも関係なく、死にたい自分の道連れ願望というとても迷惑な側面しか聞こえてこない。ニューサイエンスや仏教の引用はオウムにまで似てきている。
そも日本赤軍は他の新左翼の大衆迎合路線をあざ笑い、暴力革命を先鋭化した組織だった訳だが、その本音はこんなものなのねという安っぽさが堪らなく厭だ。この前足立正生の『PFLP』当時の著書が古本喫茶に置いてあったので読んだのだが、ゴリゴリの新左翼な文章で辟易した。用語の判る者にしか伝えようとしない姿勢は本作も同じだ。
出発点はパレスチナとの共闘だと云えば、これは彼等の活動で唯一立派だと思える処だから謙虚に拝聴しようとなるのだが、アラブのアジトの描写はシニカルに撮り飛ばされるだけだ。グアンダナモもかくやという拷問はリアルで、懐柔しようとする教授の理屈を否定する主人公の論理は立派だ。イスラエルへの批判は正当だろう。だが対峙者がこんなものでは、泥仕合と云うほかない。
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