コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 蟲師(2006/日)

メッセージ性や注視させる主題なくヴィジュアライズにも新味なしで幼稚なファンタジー感に毒されているBADムービー
junojuna

 全編が漫画の世界である。一体どこにターゲッティングした結果の代物なのだろうという愚にもつかない映画である。大きく譲ってそこは漫画の人、大友克洋の作為の視点は凡人の域を超えているのだと擁護されるむきがあろうかと思いきや、何やらその乖離は映画時間を追うごとに低次元な執着を見せて何の息吹も感じ得ない仕業となった。そもそもが荒唐無稽な漫画の世界観なのだ。であればその世界観のフェティシズム的な耽美描写に徹底していればこそ、まだ救われる余地はあろうというもの。しかし、そうした物の怪風情を漂わせる空気感の施しは一向に現われることはなく、ひいては、どこかで見たことのある役者陣がいつもの通りの演技で立ち居振舞うので、なお一層リアルさを欠いて、御伽噺としての妙味を味わうことは最後の最後まで出来ない。この時期製作された同種の素材(ゲゲゲの鬼太郎、どろろ)など、日本が世界に誇っていいジャパニメーション的怪奇譚は、無能なプロダクションによって下手に消化されてしまった観がある。ひじょうに残念である。それこそ、泉鏡花、小泉八雲に通ずる日本的な幻想譚の新しいジェネレーションカルチャーとなる魅力的な素材なのだ。今一度、再考したい。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。