コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 秒速5センチメートル(2007/日)

北関東は宇宙の果てより遠い。
パグのしっぽ

私も仕事の都合で、縁もゆかりもない北関東の某都市で単身暮した経験があります。生まれて初めて大宮以北に足を踏み入れた時の、あの心細さは未だに思い出します。一面の田んぼ、平野に突き立つ鉄塔、ひたすら続く電線……新宿を出て30分の距離に、こんな異世界が広がっているとは想像したこともありませんでした。果たして自分は今からどんな所へ送られていくのか?さっきチャージしたスイカは使えるのか?コンビニはあるのか?そもそも人は住んでいるのか?ある意味、日本の真空地帯とも言える北関東(地元の人、本当にごめんなさい)へ運ばれていく私の内心は、太陽系の外へと向かうロケット並みの心細さでした。

何を言いたいかというと、個人的に第1話は神作品。地方の風景中の異邦人というシチュエーションを見事に描き切っていた。ボタン押して電車のドアが閉まることを知らなくて、隣のおじさんに押されちゃった時の申し訳ない空気なんて、東京モンには分かるめぇ。両毛線が止まると、にっちもさっちもいかなくなることも分かるめぇ。地下鉄もバスも無いんだよ!

第1話が最高であっただけに、残りの30分ほどの与太話が悔しい。第1話、駅でおにぎり食べてるシーンあたりから不吉な予感はしていた。第2話冒頭、空の向こうに地球が見えた瞬間に確信した。「博士、物語の軌道が計算外の方向にズレています!」その後物語は軌道を修正することなく、むしろ加速しながら大きく軌道を外れ、「観客の気持」という衛星と共に宇宙の果てへ飛んで行ってしまいました。

次作は、舞台を関東から150km圏内に絞ってほしい。この人は距離の遠さを描くセンスがある。宇宙や種子島ではなく、「近いんだけど手の届かない遠さ」を真剣に描いてほしいと切に思う。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)disjunctive[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。