[コメント] リアル・フィクション(2000/韓国)
きわめてキム・ギドク作品の中ではストレートな作品である。「啓示」に導かれるように世間から迫害されてきた主人公は凶行を犯し続けるが、それが映画の中の出来事でしかないことをギドクは無慈悲に宣告する。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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苛められる側の人間たちが生涯抱き続ける怨念への解答をギドクは描き続けるが、あまりに直截すぎて本当に監督の描きたかったのはこれなのか、と劇中自分は不思議を感じていた。
これが狂気の沙汰だ、というのは明らかに間違っているだろう。主人公のかつての恋人で、親友に奪われた後ごみ屑のように捨てられた女に、主人公は優しく肩を貸してやるのだから。だが、その甘さこそが主人公のイマジネーションの限界だったのかもしれない。冒頭から主人公のイーゼルの程近くでぬいぐるみを売っていた男は、ヤクザの度重なる妨害の果てに自ら凶刃を振るうのだ。若者にとって、啓示をもたらした男がいなければ、それは想像だにできなかった行為に違いない。
だが、その出来事の直後に、現実世界から「カット!」の声が飛び、ぬいぐるみ売りが殺した男は起き上がって忽ち広場は元の雑踏に引き戻されるのだ。弱い者達の反逆は所詮『リアル・フィクション』でしかなかったという諦念。ここには残酷な現実を見つめるギドクの哀しみが描かれていたように思われる。
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