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[コメント] スパイダーマン3(2007/米)

ドラマ性はシリーズ随一。一作目から登場人物の成長を見てきたことを喜ばしく思うとともに、映画的記憶の肌触りの愛しさに感動の涙を禁じえなかった。アメリカ映画を愛する人々のための青春映画の傑作。
shiono

シリーズ物の3作目も1,2作と同じ監督が引き受けるという例はめったにない(『ゴッドファーザー』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『マトリックス』くらい?)。大体、3作目ともなれば監督を代えて新鮮な血を入れようとするようだが、こと『スパイダーマン』に関しては純血を守る方針であるらしい。

奇抜な世界観や過激なアクションに頼らず、よりおもしろいものを追求しようとするなら、やはり正統的な娯楽映画の手法に則って堅実に作るほかないのではないか。喜ぶべきことに、アメリカ映画には先人の残した素晴らしい遺産が数多くある。

実際、僕もクラシック映画を見初めて日が浅いので偉そうには言えないのだが、映画が始まってからはホークス、ワイラー、ワイルダー、ヒッチコックやワイズといった名監督たちの名前がぐるぐると頭を駆け巡って脳内物質出まくり。新しいところではコッポラやスピルバーグの雰囲気も感じた。どの部分がどうとは言えないので思い込みかもしれないが、タランティーノとは逆の方法論で発揮されたオタク魂(リスペクト)は確実に感じた。

情報量が多くて一度見ただけでは個々のシーンに言及することはできないのだが、これだけのモチーフを取り上げて監督の仕事が単なる交通整理に終わっていないところは凄い。役者のみならず、悪役の造形から小道具大道具建築物に至るまで、単体で我を主張するのではなく、場におけるケミストリーの醸成を目的として配置されている。とりわけキルスティン・ダンストは(ピンではブスだけど)触媒としては豊かな芳香を放つ若手映画女優だと思う。

スーパーヒーローの物語としても十二分に血沸き肉踊るものがあるが、個人的な印象を一言でいえば、空を見上げる市井の人々の俯瞰ショット、その顔に刻まれた暖色系の温かみ、それらすべてを包み込む語り口の大らかさ。それがとても魅力的だった。

(評価:★5)

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